Whole Nepal will become my color 「ネパール全土が私の色に染まるだろう。」

地平線から太陽が昇り、海一面を半透明のオレンジの光で覆った。
アチャリヤがバスルームの戸を開け、出てきた。
新鮮なお馴染みの香りが部屋中をあらたに満たした。
彼は質素な白地のルンギに包まれ、肩からタオルをさげていた。

わたしは彼を初めて見たときから、彼の気品と美しさにはこころを打たれていたが、
いま1メートルくらい離れた距離に彼はいたので、文字通りその美しさに心動かされていた。

均整の取れた身体、長く黒い髭、光り輝く神秘的な眼は
この世のものとは思えない忘れがたき印象を私に残した。

アチャリヤは押しかけの客を見つけても怒っていなかった。
むしろ私に微笑みかけ、親しみを込めて「君は誰かね?」とわたしに訊ねた。

「わたしはカトマンドゥーから来た工学を学んでいる学生です。貴方とパトナから文通をしているものです。」私は緊張して言って、彼の御足に触れた。OSHOはしばらく私の目を見て、「ああ君かぁ!全部覚えているよ。」とくすくすと笑った。

わたしはアチャリヤが手紙以上のことを思い出したことを分かったが、それ以上のことは口から出てこなかった。アチャリヤは私の過去生、私の複雑な現在をのぞき込み、未来をみているような感じがした。私は恐れることなく私のハートの最奥の秘密を打ち明ける準備が出来ていた。彼に逢うまでこのような大きな信頼と愛は知らなかった。

アチャリヤは椅子に座り、わたしは大理石の床に座った。彼は私にベッドに座るように勧めたが、アチャリヤのベッドに座るのはさすがに躊躇した。それでもOSHOは大理石の床は冷たいから私にベッドに座るようにと言ったので、私はそれに従った。
それから、私は自分の抱えてる問題をアチャリヤに投げかけた。理路整然と話すことは出来なかったが、彼はとても辛抱強く私の質問に耳を傾けてくれた。

わたしはパタンで初めて彼にどのように逢ったのかについて、彼の講話について、
いかに彼が私に新しい希望の兆しを与えてくれて、真理への情熱に再び火を注いでくれたということ、またいかに彼の言葉に深く感動したかという話をアチャリヤに語り始めた。

わたしは彼の存在に魅了されてしまい、もはや筋道を立てて語ることが出来なかった。
わたしはアチャリヤにわたしの探求について話し、どのようにその探求を通じて沢山の様々なグルと逢うことになったか、またそれらの遍歴が如何に無駄におわり、私のハートの中にある探究心が相変わらずいまだ燃えたままで、満たされていないかという事を語った。またわたしは彼にどのようにアチャリヤの定期購読誌を読み始めたかを語った。真実を話せば、彼の言葉を少なくとも数時間読まないで過ごす日は一日もなかった。

アチャリヤは私の家族について訊いた。
わたしは彼に少しだけ家族について話した。

アチャリヤは私にネパールのスピリチュアリティ(宗教性)の可能性がいかに大きいかということを話してくれた。チベット全地域がブッダの教えで響き渡っているように、ネパールにはアチャリヤのメッセージを吸収できる同じ可能性がある。パドマサンバヴァはチベットに仏陀の教えを一人で広めた。

サンガミトラとマヘンドラは仏教をスリランカで蘇らせた。
同じようにネパールもまたヒマラヤ山脈の美しい王国にアチャリヤ(OSHO)のビジョンを根づかせる献身的な探求者を待望している。

「もし貴方に準備が出来ているのであれば、」
アチャリヤは私に言った。
「ネパールはわたしに準備ができている。」
そして彼は愛情を込めてボディーダルマ、パドマサンバヴァ、サンガミトラとマヘンドラの話を思い出させた。
しかしこれらの話は私にとって素晴らしいお伽話のように聞こえ、それ以上ではなかった。神話は歴史に独特な雰囲気を加える。マインドは疑いなくお伽話を受け入れる傾向がある。しかしアチャリヤはこれらのお伽話がネパールで同じように繰り返さえるのを待っているかのように話した。しかもそのお伽話が私を通じて?
わたしは彼のビジョンを一切疑わなかった。しかし私自身の能力を疑った。

それにしてもアチャリヤが語っていることは壮大過ぎて、真実味がなかった。やはりお伽話に聞こえた。
私の頭のなかで考えていることを読むように、彼は言った。
「弟子が明け渡す準備ができたとき、弟子は個人的な境界と限界をこえていく。
そして全宇宙が彼を通じて働きはじめる。」

アチャリヤは私が何が一番好きか訊いた。
私は直ぐに答えた。「旅行です!」

事実わたしは修士学位を終えたあと、航空入学試験を受けたことがあるのだ。
私の両親はこの事を知って、パニックな状態に陥り
その面接の日には私を部屋に鍵をかけて閉じこめた。
だから私のパイロットになる夢は終わりを告げた。

しかし工学を勉強している時でさえ、世界中をただで旅行できる旅券を手に入れるためにインドの列車か航空会社に就職しようと決めていた。

わたしはRahul Sankrityayanによって書かれたAthato Ghumakkad Jigyasaを読んだ。この本も私の旅行への憧れに火を付けた。

アチャリヤはクスクスと笑いながら言った。
「パイロットは世界を見ることができない。彼らはただ空港を見るだけだ。
まず相応しい人間になりなさい。あなたに準備が出来たとき、私はあなたに私のメッセージと共に世界中を旅させる。世界のどこでも貴方を大きな愛で受け入れる人々がいるだろう。しかしまずその愛にとって相応しい人間になりなさい。」

アチャリヤは彼の約束を果たしただけでなく、彼のやり方で途方もなく満たしてくれた。わたしは最近年間の半年をOSHOの愛とビジョンを分かちあうために世界中を旅している。もしすべての招待を受け入れたなら、一年中旅をすることになる。
ネパールの私のコミューンへの責任があるために、一年の半年間を旅行することに制限している。

実際は私の中の旅行熱はすっかり満たされたので、一年中独りで静かに過ごすのを楽しみにしているのだが、OSHOはなんとしても私の中の旅行への欲望の最後の種を全滅させようとしているようだ。だから私の身体は老いてきたにもかかわらず、OSHOはいまだ私に世界中を旅行させるのだ。
彼は常に確かに全てのことについて正しかった。
わたしは何処にいようと、大きな愛と暖かさで家族の一員のように迎えられている。
いまになってわたしがパイロットになりたいといった時に何故OSHOが笑ったのかが分かった。
OSHOはわたしが夢見ていた千倍以上の事を私に与えてくれた。
OSHOの恩寵は私が実現できないと思っていた空想さえ凌いでいた。
わたしはアチャリヤとこんなに近くに一緒にいれることにゾクゾクとした。
彼はわたしにいくつか質問をし、わたしはそれについて詳しく答えた。
OSHOは私の自制心、禁欲と過去の宗教的な旅に対する強迫観念をについて知って、
アチャリヤはふざけて言った。
「君は伝統的な宗教の本を必要以上に読んだ。この種の本に君は台無しにされてしまったようだ。」

それから彼は私に「セックスから超意識へ」という彼の本を読むようにすすめてくれた。その本は最近出版されるやいなやセンセーションを巻き起こしていた。
私たちの会話が続き、彼は言った。
「いま海外から招待されていて、3月にナイロビに行くことになるかもしれない。」
「行かないでください。」衝動的にわたしの口からその言葉がでた。
「何故かね?」アチャリヤは突然そう言われて明らかに呆然としていた。
「なぜならはもし貴方が旅行を始めたら、すぐに海外の人は貴方の偉大さに気づくでしょう。そうしたら私たちのよう連中にとって貴方に逢うことは非常に難しくなってしまうでしょうから。」
と私は言った。

そうするとアチャリヤは「聞いたかね?この若者はよくわかってる。
彼が言ったようなことがまさに近いうちに実際に起るだろう。」と言った。
アチャリヤに褒められて、私の中に自信と勇気が沸いてきた。その勢いで私は
「アチャリヤ、3月にはナイロビではなくてカトマンドゥーに来てください。」と言った。

彼はわたしをじっとみて、言った。
「それを準備することはできるのかね?」
わたしはアチャリヤへの愛に打ちのめされ、
自分自身の力を買いかぶってしまい、
「両親は政治家の家柄なので、彼らに準備を手伝ってもらうことが出来ます。」
と彼に言ってしまった。
アチャリヤは言った。
「わかった。しかしホテルには滞在したくないので、君の家に滞在したい。」
その当時私の両親はカトマンドゥーのプタリサダクの小さな貸家に住んでいた。
それは三階建ての家で一階が私の父の事務所になっていて、そこに私たちは暮らしていた。アチャリヤをネパールに招待しようと決めたとき、突然わたしは家全体でも共同のバスルームが一つしかないことに気がついた。

わたしはアチャリヤが如何にプライバシーについて気を使っているか知っていたので、
カトマンドゥーのニューロードにある唯一評価されたParasホテルに滞在するのが一番良いと言った。

バスルームの状態もだけでなく、私たちの家のゲストルームは家具が備え付けられていて、アチャリヤの趣向にとっては物があり過ぎたし、私の両親は政党に所属していたので政治家達がいつも訪問していた。だから私はアチャリヤはホテルに滞在した方がいいと主張した。それに対して彼は答えた。「君のために私はやってくるのだから、君の家に滞在するよ。」
そしてわたしがバスルームのことについて言うと、
「それは問題ではない。それはなんとかなる。心配するな。私は快適さが必要なわけではなく愛が必要なのだ。君の瞳から溢れ出ている涙。その涙が私は君のところで滞在したほうが幸せだということを十分示している。」と彼は言った。

私はアチャリヤに言った。「ネパールはまだ瞑想キャンプをするには早過ぎるかもしれませんが、
公式の講話と個人的な集いであれば確実に準備することが出来るかと思います。」
そうするとアチャリヤは眼に神秘的な輝きをみせながら、笑って言った。
「君はまだネパールの可能性を知らない。もし君の準備ができれば、ネパールで偉大な精神的な革命が起こるであろう。」

わたしが彼の部屋から出てきたまさにその日に
すでに革命は始まっていた。

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